糸リフトの痛みは、設計で軽くできる。

麻酔・術中術後の痛みと経過を、症例2000件以上のたるみ専門医が解説します。

糸リフトは「痛い施術」か——結論から

結論として、糸リフトは正しく麻酔をかけて設計を整えれば、多くの方が想定より痛くない施術です。ただし「まったく無痛」とは言えません。麻酔注射の際の不快感、術後数日のつっぱり感や鈍痛は、ほぼ必ずあります。

「痛そうだから怖い」「痛みが続くと聞いた」という声は多く届きます。その不安は正直なところです。だからこそ、施術中・術後それぞれで何が起きるのかをステップごとに整理します。知っておくだけで、当日の体感がかなり変わります。

施術中の痛み——どの工程が、どのくらい痛いのか

麻酔の種類(局所麻酔 / 笑気麻酔)

糸リフトで使われる麻酔は主に2種類です。

局所麻酔(注射)

皮膚と皮下に麻酔薬を注入します。この注射自体が施術全体の中でもっとも「痛い」と感じやすい工程です。細い針を使い、ゆっくり薬液を入れることで刺激を抑えられますが、チクッとした痛みと、液が広がるときの圧迫感は残ります。麻酔が効き始めると、そのあとの糸の挿入はほとんど感じなくなります。

笑気麻酔(オプション)

亜酸化窒素を吸入することで、ふわっとした鎮静状態になります。眠るわけではありませんが、不安や緊張が和らぎ、麻酔注射の痛みも感じにくくなります。痛みへの不安が強い方、敏感な部位を施術する方に向いています。局所麻酔と笑気麻酔を組み合わせることで、快適さが大きく変わります。

糸を挿入する工程

麻酔が十分に効いた状態であれば、糸を挿入するときの感覚は「押される感じ」「引っ張られる感じ」程度です。刺す痛みよりも、皮下で糸が通るときの異物感・牽引感の方が気になる方が多い印象です。麻酔が浅い箇所では痛みが出ることもあるため、術中に「痛い」と感じたら遠慮なく伝えてください。その都度、麻酔を追加します。

固定・引き上げる工程

糸の端を引いてリフトアップする瞬間に、ズキッとした痛みや圧迫感を感じる方がいます。引き上げる量が多いほど、この感覚は強くなりやすいです。ただし麻酔が適切なら、鋭い痛みではなく「重い圧迫感」として感じる程度で済むことがほとんどです。

院長(能登谷)より:

施術中の痛みの大半は「麻酔の質」で決まります。細い針、ゆっくりとした注入速度、必要な部位への追加麻酔——この3つを丁寧にやるだけで体感は大きく変わります。「前のクリニックでかなり痛かった」という方が当院で受けて「これだけ?」と言うことは少なくありません。

術後の痛みの程度と経過

当日(施術直後〜数時間)

麻酔が切れてくると、引き上げた部位につっぱり感・重だるさ・軽い鈍痛が出てきます。「頬が重い」「引っ張られている感じ」と表現する方が多いです。鋭い痛みよりも、圧迫された感覚・違和感が主体です。腫れも出始めますが、1〜3日で落ち着くことがほとんどです。

鎮痛剤(ロキソプロフェンまたはカロナール)を処方する場合が多く、飲んでいれば当日夜は多くの方が眠れます。

翌日〜3日目

つっぱり感はこの時期がピークになる方が多いです。笑った時・口を大きく開けた時・咀嚼時に引っ張られる感覚が出やすいです。日常生活(仕事・軽い家事)は問題ないレベルですが、大きく口を開ける食事や激しい表情は控えてもらいます。

鎮痛剤を適宜使いながら過ごしてください。

4日目〜1週間

急速につっぱり感が和らぎます。「まだ少し気になる」という方はいますが、痛みとして意識するほどではなくなることが多いです。顔の向きを変えたとき、マスクをした時などに違和感を覚える程度に落ち着いていきます。

2週間〜1か月

ほぼ消失します。稀にこの時期でも「特定の表情のときだけつっぱる」感覚が残る方がいますが、徐々に解消されます。糸が皮下組織に安定してくると、引き上げた状態が自然な感覚になります。

個人差について

上記はあくまで一般的な経過です。痛みの感じ方には個人差があります。挿入した糸の本数、使用した糸の種類、引き上げ量、体質(痛みへの感受性・皮膚の厚さ)によって大きく変わります。「全然平気だった」という方もいれば、「4〜5日かなりつっぱった」という方もいます。

痛みを左右する要因——設計でコントロールできる

「糸リフトは痛い」という印象が定着している背景のひとつに、施術の設計次第で痛みの程度がまったく違うという事実があります。

1. 糸の本数

本数が多いほど、麻酔注射の回数も多く、術後のつっぱりも強くなりやすいです。「たくさん入れたほうが効く」という発想で本数を増やしすぎると、痛みと腫れが増す割に効果が比例しないケースもあります。必要な本数を見極めて使うことが重要です。

2. 挿入する層(深さ)

糸を入れる深さによって感覚が変わります。深い層(SMAS層・脂肪層)に入れると、より強いリフト効果が得られますが、麻酔がしっかり届かないと痛みが出やすい部位もあります。逆に浅すぎると効果が出にくい。どの深さに何を入れるかは、解剖を理解した医師の判断が必要です。

3. 糸の種類・コグの形状

糸にはトゲ(コグ)がついており、このコグで組織を引き上げます。コグの向き・間隔・強さは糸の設計によってさまざまで、引き上げ力が強い糸ほど初期の牽引痛・つっぱりが出やすい傾向があります。一方、細いコグが均等に分散する設計の糸は、痛みを抑えながら自然なリフト感を作りやすいです。

4. 医師の手技

同じ糸・同じ本数でも、医師の技術によって挿入時の感覚は変わります。スムーズに組織内を通せるか、引き上げる方向と量のバランスが適切か——これらが術後のつっぱり感の程度にも直結します。

院長(能登谷)より:

たるみの主因は、ボリュームが下がって重力で落ちていることです。それを引き上げるのが糸リフトの本質で、「とにかく引っ張れば良い」という設計は向かないです。引き上げる量・方向・使う糸を、その方の顔の構造に合わせて決めていく。そうすると必要な本数も自然に絞られ、痛みも負担も最小で済む。症例2000件を通じて、そこが一番大事だと確信しています。

痛みを抑えるためにクリニック側がやること

痛みを減らすために、クリニック側でできることは複数あります。

麻酔の工夫

  • 細い針(30G以上)を使い、麻酔注射の刺激を減らす
  • ゆっくり液を注入して圧痛を抑える
  • 麻酔薬を適温に温めて使う(冷たい液体はそれ自体が痛い)
  • 笑気麻酔を組み合わせて、注射前の緊張・痛みを和らげる

設計の工夫

  • 必要な部位・本数に絞り込む(「全部入れる」はやらない)
  • 痛みが出やすいエリア(こめかみ・耳周り)の麻酔を丁寧に追加

術後ケア

  • 鎮痛剤を処方し、必要に応じて飲んでもらう
  • 術後の注意事項を具体的に伝えて、余計な刺激(飲酒・激しい表情・強いマッサージ)を避けてもらう

我慢すべきか・鎮痛剤の使い方

「鎮痛剤を飲んでいいのか」という質問をよく受けますが、処方されている鎮痛剤は術後の痛みに対して適切に使うためのものです。我慢する必要はありません。

一般的な使い方としては、痛みや不快感を感じたら飲む、もしくは就寝前に飲むというパターンが多いです。鎮痛剤を飲んで痛みが取れるようなら、それはコントロールできている範囲です。

飲んでも全然効かない、激しい痛みが続く、4〜5日以上鎮痛剤なしでは日常生活がつらいという場合は、クリニックに連絡を。感染や血種(血の塊)などの合併症が起きている可能性があります。

リスク節——痛みが強い・長引くときのサインと対処

術後の痛みが通常の経過を超えて長引く、または強まる場合は、以下の状態が疑われます。

感染

糸を入れた部位が赤く腫れ、熱感がある、膿が出る、発熱するなどの症状がある場合は感染のサインです。抗生剤での対応が必要になる場合があり、重症例では糸の除去が必要なこともあります。

血腫(けっしゅ)

皮下に血が溜まった状態です。術後に急に腫れが強くなる、固い塊ができる、色が変わるといった変化があったらクリニックに連絡してください。

糸の露出・感染

稀に糸が皮膚から出てきてしまうことがあります。触ると痛い、違和感がある場合は自己処理せずクリニックへ。

神経・血管への影響

非常に稀ですが、挿入時に細い神経や血管に触れることで、しびれ・ジンジンする感覚が数週間続くことがあります。多くは自然に消失しますが、長引く場合は受診が必要です。

いずれも、自己判断で様子を見続けることは推奨しません。おかしいと感じたら早めにクリニックに連絡することが最善です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 糸リフトの施術中は意識がありますか?眠れますか?

意識は通常あります。局所麻酔のみの場合は会話もできます。笑気麻酔を使うとぼんやりとした状態になりますが、眠り込む麻酔(全身麻酔)ではありません。麻酔が十分に効いた状態では施術中の痛みはほとんど感じませんが、異物感・圧迫感・引っ張られる感覚は残ります。

Q2. 施術後、当日はどんな状態ですか?仕事に戻れますか?

腫れ・内出血・つっぱり感が出ます。当日から翌日にかけてが最も強い状態で、デスクワークであれば翌日から戻れる方が多いです。ただし、人前に出る仕事や接客業の場合は、腫れや内出血のことを踏まえて数日のダウンタイムを確保できると安心です。

Q3. 糸リフトで顔がこわばって動かなくなりますか?

一時的に引き上げた方向に動きにくさや表情の不自然さが出ることがあります。数日〜2週間程度で糸が皮下組織に馴染むと、自然な動きに戻っていきます。設計が適切であれば、「やりすぎた感」は出にくいです。

Q4. 糸リフトの費用はどのくらいですか?

糸の種類・本数・施術範囲によって変わります。Nリフトなどのスタンダードな糸リフトにモニター価格が設定されているクリニックもあります。最新の料金については料金ページをご確認ください。

Q5. 過去に糸リフトをして痛かった経験があります。また同じになりますか?

以前の施術で強い痛みがあった場合、麻酔の量・種類・手技の違いで改善できることがあります。どの工程で痛みがあったか、笑気麻酔を使ったかどうか、糸の種類はどうだったかなど、なるべく詳しく伝えてもらえると、今回の設計に活かせます。「怖い」という感覚も含めてカウンセリングで話してください。

まとめ——痛みも負担も、設計でコントロールできる

糸リフトの痛みは、麻酔の質と施術設計によって大きく左右されます。

  • 施術中の痛みの山場は麻酔注射。糸挿入中は適切な麻酔があればほとんど感じない
  • 術後は当日〜3日のつっぱり感・鈍痛が主体。1週間で急速に和らぐ
  • 本数・挿入層・糸種の選択が痛みと仕上がりの両方を決める
  • 鎮痛剤は我慢せず使う。コントロールできない痛みは早めに受診

「たるみを戻す」という目的に対して、必要な本数・必要な範囲だけを丁寧に施術する。その設計の積み重ねが、痛みを最小限にしながら自然な仕上がりを作ります。

監修:能登谷 翔 医師(たるみリフト専門医/美容外科歴10年・糸リフト症例2000件以上/日本形成外科学会・美容外科学会 正会員/gift clinic 銀座 院長)