糸リフト後の引きつれ・凹み。
糸リフト後の引きつれ・凹みについて、正常な経過と注意が必要なサインの違いを銀座のたるみリフト専門医が解説。

引きつれと凹み——まず「別の症状」だと理解する
糸リフトの術後に多くの方が経験する感覚に、「引きつれ」と「凹み」があります。この二つは似たような場面で語られがちですが、原因も対処も異なります。
引きつれは、糸が組織に固定され引き上げた方向へ皮膚が「つっぱる」感覚です。表情を動かしたとき、頬や口元の一部が「糸で引かれている」ように感じることを指します。ほとんどのケースで、施術後の自然な経過の一部です。
凹みは、糸を挿入した点、あるいは強く引き上げた部分の皮膚表面が、へこんで見える・触れる状態です。軽度で一時的なものから、皮膚の癒着によって残るものまで幅があります。
この記事では、それぞれが「起きて当然の経過」なのか「クリニックに相談すべきサイン」なのかを、時期別・症状別に整理します。腫れ・内出血を含めたダウンタイム全体の経過は別記事で解説しているため、ここでは引きつれ・凹みという二つの症状にしぼり、部位ごとの違いや実際の対処法まで掘り下げて解説します。

引きつれが起こる理由と正常な経過
なぜ引きつれが起きるのか
糸リフトは、コグ(棘)のついた糸を皮下組織に通し、たるんで下がった部分を引き上げて固定する施術です。固定された直後は、皮膚・皮下組織がまだ新しい位置になじんでおらず、引っ張られた方向へのテンションを感じやすい状態にあります。これが引きつれの正体です。
組織が糸になじみ、周囲の細胞が糸を包み込むように定着していく過程で、テンションは徐々に分散されていきます。
時期別の経過の目安
| 時期 | 引きつれの状態 |
|---|---|
| 当日〜3日 | もっとも強く感じやすい。表情を動かすたびに突っ張る感覚がある |
| 4日〜1週間 | 徐々に和らぐ。大笑いや口を大きく開けるなど特定の表情でのみ気になる程度に |
| 2週間〜1ヶ月 | 多くの方でほぼ気にならなくなる |
| 1ヶ月以降 | 通常は解消。稀に特定の角度・表情でのみ残ることがある |
院長(能登谷)より:
引きつれの強さは、入れた糸の本数・引き上げた量にほぼ比例します。多く引き上げるほど初期のテンションは強く出やすい。だからこそ、必要な範囲・必要な本数にしぼった設計が、仕上がりの自然さだけでなく術後の負担の軽さにもつながります。「たくさん引けば効果が出る」という考え方は、この引きつれの負担を考えると必ずしも正しいとは言えません。
引きつれが正常の範囲と考えられるサイン
- 表情を動かしたときだけ感じ、安静時は気にならない
- 左右差はあっても、日を追うごとに軽減している
- 皮膚の色調・熱感に異常がない
- 触れて強い痛みが出るわけではない
これらに当てはまる場合、多くは経過の一部として様子を見ても問題ないとされています。
凹みが起こる理由と注意が必要なパターン
一時的な凹み(多くのケースで自然に目立たなくなる)
糸の挿入点や、引き上げによって皮膚が糸に引き寄せられた部分に、浅いくぼみやえくぼのような跡が一時的に生じることがあります。これは皮下組織のむくみが引く過程や、糸のテンションが強くかかっている部分で起こりやすく、多くは数週間から数ヶ月かけて目立たなくなっていきます。
経過観察が必要な凹みのパターン
以下のようなパターンは自然に軽快することもありますが、期間が長引く場合や悪化する場合は相談が必要です。
- 癒着によるくぼみ:糸の周囲で組織同士が癒着し、表情を動かすたびに一点がへこむ状態。笑ったときに「ひきつれ線」のようにくぼみが出ることがある
- 圧迫によるくぼみ:糸を強く締めすぎた、または浅い層に入れすぎた場合に、皮下脂肪が圧迫されて陥凹が残ることがある
- 左右非対称な凹み:片側だけ強く目立つ場合は、引き上げ量や挿入層に左右差があった可能性がある
院長(能登谷)より:
凹みの多くは、引っ張りすぎか、浅すぎる層に糸を入れたことが背景にあると感じています。たるみは脂肪の位置が下がって起きるものなので、糸リフトの本質は下がったボリュームを元の位置に戻すように設計することだと考えています。無理に皮膚だけを持ち上げようとすると、その分どこかにしわ寄せが出る。凹みはその典型的なサインの一つです。
自己チェック:正常経過か受診すべきサインか
以下のセルフチェック表を使って、今の状態を整理してみてください。あくまで目安であり、判断に迷う場合はクリニックに直接確認することをおすすめします。
| チェック項目 | 経過観察でよいことが多い | 相談を検討したほうがよい |
|---|---|---|
| 発生時期 | 施術直後〜数週間以内 | 1ヶ月以上経過しても悪化している |
| 動きとの関係 | 表情を動かした時のみ感じる | 安静にしていても常に感じる |
| 左右差 | 軽度にあり、徐々に均等化していく | 明らかな左右差が続く、または拡大している |
| 皮膚の状態 | 色調・熱感に変化がない | 赤み・熱感・硬結を伴う |
| 痛みの有無 | 違和感程度にとどまる | ズキズキした痛みを伴う |
| 時間経過での変化 | 週を追うごとに軽減している | 変化がない、または悪化している |
「相談を検討したほうがよい」の欄に複数当てはまる場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに施術を受けたクリニックに連絡してください。
部位別に見る引きつれ・凹みの出やすさ
糸リフトは頬・こめかみ・フェイスラインなど複数の部位に糸を通すため、部位によって引きつれ・凹みの出方に違いがあります。
頬(ミッドフェイス)
もっとも引き上げ量が大きくなりやすい部位で、笑ったときの引きつれを自覚しやすい場所でもあります。頬骨の近くに固定点を置く設計では、その周囲に軽いくぼみが出ることがありますが、多くは脂肪組織のクッションがあるため、時間経過とともに目立たなくなりやすい傾向があります。
こめかみ
皮膚が薄く、皮下脂肪も少ない部位のため、他の部位に比べて凹みが目立ちやすいとされています。こめかみ自体がやせている方は、糸の圧が直接皮膚表面に出やすく、ボリューム不足を補うヒアルロン酸を併用する設計が選ばれることもあります。
フェイスライン・顎下
引き上げる距離が長くなりやすく、引きつれを強く感じやすい部位です。一方で皮下脂肪がある程度厚いため、凹みそのものは頬やこめかみに比べて目立ちにくい傾向があります。
耳周り(固定部)
糸の固定点を置くことが多い部位で、引っ張られる感覚や軽い凹凸を感じやすい場所です。髪の生え際に近く目立ちにくい位置に固定点を設計することで、外見上の影響を抑える工夫がされます。
同じ「引きつれ」「凹み」という言葉でも、頬とこめかみでは出方も対処の考え方も違います。皮下脂肪が薄い部位ほど繊細な設計が必要になるため、カウンセリングの段階でその方の皮膚の厚み・脂肪のつき方を確認したうえで、糸の種類や挿入層を部位ごとに調整することが重要になります。
対処法——症状別にできること
引きつれへの対処
多くの引きつれは時間経過とともに自然に緩和していきます。この間、無理に表情筋を大きく動かしたり、強くマッサージしたりすることは避けてください。糸の位置がずれる、効果が弱まるなどの可能性があります。担当医の指示があれば、指定された範囲での軽いケアにとどめます。
凹みへの対処
一時的な凹みは経過観察で改善することが多いですが、長引く場合や目立つ場合はクリニックでの診察が必要です。対処の方向性は原因によって異なります。
- 癒着が原因と判断された場合:癒着を解除する処置が検討されることがある
- 引っ張りすぎ・浅すぎる層への挿入が原因の場合:糸の緊張を緩める処置や、部分的な糸の調整が検討されることがある
- ボリューム不足が背景にある場合:ヒアルロン酸などで補うアプローチが検討されることもある
いずれも自己判断でのマッサージ・圧迫は避け、必ず診察のうえで方針を決めることが重要です。
経過中に自分でできる工夫
診察が必要なレベルではない軽度の引きつれ・凹みについては、日常生活の中でできる工夫もあります。表情を意識的に大きく動かしすぎない、施術部位を強くこすらない、洗顔時に優しく扱うといった基本的なケアは、組織が糸になじむ過程を妨げないために役立つとされています。むくみが強い時期は、施術を受けたクリニックの指示に沿って、指定された範囲での冷却・保湿を続けることも回復の助けになります。
経過を記録しておくメリット
引きつれ・凹みが「改善しているのか」「悪化しているのか」は、自分では判断しづらいことがあります。施術後、同じ角度・同じ照明・同じ表情で定期的に写真を残しておくと、日々の小さな変化に惑わされず、週単位・月単位での変化を客観的に振り返りやすくなります。診察の際にも、口頭での説明だけより経過を伝える材料として役立ち、担当医がその方の回復スピードに合わせた判断をしやすくなります。
設計段階でできる予防
引きつれ・凹みのリスクは、施術前の設計である程度コントロールできる領域です。
- 必要な範囲・本数にしぼり、過剰な引き上げを避ける
- 挿入する層(深さ)を、たるみの原因部位に合わせて適切に選ぶ
- 引き上げる方向を、顔の構造(脂肪の下がり方)に沿って決める
- カウンセリングで「どの程度の変化を望むか」を丁寧にすり合わせる
「バレない自然な変化」を目標にする設計は、結果として引きつれ・凹みのリスクを抑えることにもつながります。やりすぎない設計は、見た目の自然さと術後の負担の軽さの両方に効いてきます。
リスク節——放置せず相談すべきサイン
以下に当てはまる場合は、経過観察を続けず早めにクリニックへ連絡してください。
- 1ヶ月以上経過しても引きつれ・凹みが軽快しない、または悪化している
- 患部に赤み・熱感・膿など感染を疑う症状がある
- 明らかな左右非対称が続いている、または広がっている
- 触れると強い痛みがある、しびれを伴う
- 凹みが日常生活で人目に気になるレベルで固定化している
これらは自然経過の範囲を超えている可能性があり、癒着解除や部分的な糸の調整など、何らかの処置が必要になる場合があります。
年代・肌質による出方の違い
引きつれ・凹みの出やすさは、年代や肌質によっても差があります。皮膚のハリが比較的保たれている30代では、引きつれは早めに落ち着く傾向がある一方、皮膚が薄く弾力が低下しやすい40代後半以降では、テンションが分散されにくく、引きつれ・凹みの期間がやや長引く場合があります。乾燥肌・皮膚が薄い体質の方は、コラーゲンの再構築に時間がかかりやすいため、保湿ケアを丁寧に続けることが回復の助けになるとされています。過去に日焼けやスキンケアで皮膚のダメージが蓄積している場合も、通常より治まりが遅く感じることがあります。いずれも異常というわけではなく、体質による経過の差として理解しておくと不安が和らぎやすくなります。
よくある質問
Q1. 引きつれはいつまで様子を見てよいですか?
多くは1ヶ月以内に軽快していきます。1ヶ月を超えても強い引きつれが続く、または悪化している場合は、担当クリニックに相談してください。
Q2. 凹みは自然に消えますか?
一時的なむくみやテンションによる浅い凹みは、数週間から数ヶ月かけて目立たなくなることが多いです。ただし癒着によるくぼみは自然には改善しにくく、診察での判断が必要です。
Q3. 自分でマッサージして治してもいいですか?
自己判断でのマッサージは避けてください。糸の位置がずれたり、効果が弱まったりする可能性があります。気になる場合は、まず担当医に相談してください。
Q4. 引きつれや凹みは糸を抜けば治りますか?
原因によります。癒着や過度な緊張が原因の場合、部分的な処置で改善することもありますが、必ず診察のうえで判断が必要です。自己判断での対応は避けてください。
Q5. 引きつれ・凹みが出にくい施術設計はありますか?
必要な範囲・本数にしぼり、たるみの原因部位に合わせた層・方向で糸を挿入する設計は、引きつれ・凹みのリスクを抑えやすいとされています。カウンセリングで希望する変化の程度をすり合わせることが重要です。
Q6. 引きつれと凹み、どちらが起きやすいですか?
一般的には引きつれのほうが多くの方に一時的に起こり、凹みは頻度としては少ないとされています。ただし糸の本数や挿入層によって出方は変わるため、事前のカウンセリングで自分の顔の状態に合った設計かどうか確認することが大切です。
監修:能登谷 翔 医師(たるみリフト専門医/美容外科歴10年・糸リフト症例2000件以上/日本形成外科学会・美容外科学会 正会員/gift clinic 銀座 院長)