溝はヒアルで埋め、輪郭は糸で引き上げます。

糸リフトとヒアルロン酸を併用する設計の考え方を銀座のたるみリフト専門医が解説。

糸リフトとヒアルロン酸併用で整った輪郭の女性のイラスト

なぜ糸リフトとヒアルロン酸を併用するのか

「糸リフトとヒアルロン酸、どちらを受ければいいですか」という相談は多いですが、この二つは競合する選択肢ではなく、役割が異なる施術です。片方だけを選んで満足のいく結果にならなかった方の中には、実は自分の状態が併用向きだった、というケースが少なくありません。判断軸はシンプルです。頬やこめかみの「くぼみ・溝」として悩みが出ているならヒアルロン酸、フェイスラインや頬全体の「輪郭のもたつき・下がり」として悩みが出ているなら糸リフト——これが設計の出発点です。糸リフトは下がった組織を引き上げて「位置」を戻す施術、ヒアルロン酸は失われた「ボリューム」そのものを補う施術で、たるみの多くは脂肪の位置が下がることと、加齢でボリュームそのものが減ることの両方が同時に進みます。引き上げるだけでは足りない部分、補うだけでは足りない部分が出てくるからこそ、両方を組み合わせて顔全体を設計することで、より自然な仕上がりに近づけやすくなります。

この記事では、それぞれの得意分野の違いから、フルフェイスで設計するときの考え方、施術の順番やタイミング、費用感、リスクまでを順を追って整理します。

糸リフトとヒアルロン酸、それぞれの得意分野

項目 糸リフト ヒアルロン酸
主な作用 下がった組織を引き上げる ボリュームを補う・凹みを埋める
得意な悩み フェイスラインのもたつき、頬・こめかみの下垂 ほうれい線、こめかみ・頬のこけ、あごの輪郭形成
持続期間の目安 一般に1〜2年程度とされる 部位・製剤により半年〜2年程度とされる
ダウンタイムの傾向 腫れ・引きつれが数日〜数週間出ることがある 内出血・腫れが数日で落ち着くことが多い
施術時間の傾向 ヒアルロン酸より長くなる傾向 比較的短時間で終わる
除去・調整のしやすさ 抜去は可能だが調整の自由度は限られる 溶解剤で量を調整しやすい

どちらが優れているという話ではなく、「引き上げが必要な状態か」「ボリュームを補う必要がある状態か」を診察で丁寧に見極めることが、設計の出発点になります。

院長(能登谷)より:
たるみは脂肪の位置が下がって起きるものですが、同時にその脂肪自体が痩せてボリュームが減っていることも多いです。糸リフトだけで引き上げようとすると、量が足りない部分は無理に引っ張ることになり、不自然な仕上がりや過度な負担につながります。ヒアルロン酸で先に土台のボリュームを整えてから引き上げる、という順番が合う方は少なくありません。

フルフェイス設計の部位ごとの役割分担を示す図解イラスト

フルフェイス設計の考え方——部位ごとの役割分担

顔全体を設計する場合、部位ごとに「引き上げる」か「補う」かの役割を分けて考えることが基本になります。

  • こめかみ・頬の上部:加齢でこけやすく、ボリュームが減ることでたるみが強調されやすい部位。くぼみ・溝として悩みが出るならヒアルロン酸で土台を補う設計が基本になります
  • 頬の中央〜下部:脂肪の下垂が主体になりやすく、輪郭のもたつきとして悩みが出るなら糸リフトで引き上げる設計が中心です
  • フェイスライン・顎周り:下垂したフェイスラインは糸リフトで、輪郭のシャープさやあごの前突感はヒアルロン酸で整えます
  • ほうれい線:糸リフトで頬全体を引き上げることで浅くなる場合もあれば、ヒアルロン酸で溝そのものを埋めるほうが向く場合もある

どの部位にどちらを使うかは、たるみの原因が「下垂」か「ボリューム減少」かによって変わるため、診察での見極めが前提になります。

年代による設計の傾向

30代は皮膚のハリがまだ比較的保たれているため、こめかみ・頬の一部にヒアルロン酸で軽く補う設計が中心になることが多く、糸リフトを併用する場合も本数を絞った軽めの設計になりやすい傾向があります。40代になると、ボリューム減少と下垂の両方が同時に進みやすく、部位ごとに役割を分けた併用設計が検討されることが増えてきます。50代以降は皮膚のたるみそのものが進んでいる場合が多く、糸リフトでの引き上げ量が相対的に重要になりつつ、こけが目立つ部位にはヒアルロン酸で丁寧に土台を補うという組み合わせが選ばれやすくなります。あくまで傾向であり、実際の設計はその方の骨格・皮膚状態次第で個別に判断されます。

施術の順番——どちらを先に行うか

基本の順番は、ボリュームを補うヒアルロン酸を先に行い、土台を整えてから糸リフトで引き上げるという設計です。土台のボリュームが整った状態で引き上げれば、引き上げる量を必要最小限に抑えられ、不自然な仕上がりを避けやすくなります。

一方で、下垂が主体で明らかに引き上げが優先される状態であれば、先に糸リフトで土台を整え、仕上げとしてヒアルロン酸で微調整するという順番が選ばれることもあります。どちらが正解ということではなく、その方の顔の状態、下垂とボリューム減少のどちらが主因かによって判断が変わります。

同日施術は可能か・間隔を空けるべきか

同日に両方を行うこと自体は選択肢としてありますが、腫れ・内出血が重なりやすくなる、ダウンタイムがまとまって出やすくなるという側面があります。仕上がりの評価がしやすいよう、また体への負担を分散させるために、数週間程度の間隔を空けて段階的に行う設計が選ばれることも多いです。

院長(能登谷)より:
一度にすべてをやろうとすると、腫れや内出血が重なって回復も見えづらくなります。私は基本的に、まず一方の施術を行って落ち着いた状態を確認してから、次の施術で仕上げる段階的な設計を勧めることが多いです。急がず、その都度必要な分だけを積み重ねる方が、結果的に自然な仕上がりに近づくと感じています。

費用感の考え方

併用する場合、それぞれを単独で受けるよりも総額は上がる傾向にあります。ただし、必要な範囲・量を見極めて設計することで、過剰な施術を避け、結果的に無駄な費用を抑えられる場合もあります。料金はクリニックや使用する糸・製剤の種類、施術範囲によって異なり、モニター価格が用意されている場合もあります。具体的な金額は、カウンセリングまたは料金ページで確認してください。施術範囲を欲張らず、必要な部位にしぼって設計することが、結果的に費用対効果を高めることにもつながります。

一度にすべてを行うのではなく、優先順位の高い部位から段階的に施術を進めることで、予算配分をコントロールしやすくなるという考え方もあります。「まず気になる部分だけ」「様子を見ながら追加する」という進め方は、費用面でも心理的な負担の面でも無理をしにくい選び方だと言えます。

メンテナンスの考え方——併用後の付き合い方

糸リフトとヒアルロン酸は持続期間が異なるため、時間の経過とともに「片方の効果だけ弱まる」という状態が起こります。たとえば、ヒアルロン酸の持続が先に切れてボリューム感が減ってくると、糸リフトで引き上げていた部分が相対的にやせて見えることがあります。逆に糸の効果が緩んでくると、せっかく整えたボリュームの土台が下がって見えることもあります。

このため、併用設計を行った場合は、どちらか一方だけを単発で受けるよりも、定期的な経過観察とメンテナンスのタイミングを意識しておくことが、状態を長く保つうえで重要になります。半年〜1年に一度、状態を確認しながら必要な部分だけ追加する、という付き合い方が現実的です。

併用した方には、次にどちらの効果が先に落ち着いてくるかをあらかじめお伝えすることが重要です。「そろそろヒアルロン酸のボリュームが落ち着いてくる時期」「糸の効果が緩やかに落ち着いてくる時期」を知っておくだけで、次のメンテナンスをどう考えるか判断しやすくなります。行き当たりばったりで追加するのではなく、見通しを持って付き合うことが、自然な状態を長く保つコツだと言えます。

併用によるリスク・注意点

  • 腫れ・内出血が両方の施術で重なると、ダウンタイムがまとまって長く感じられることがある
  • ヒアルロン酸注入部位に近い場所へ糸を通す場合、注入した部位の状態によって施術の難度が上がることがある
  • 一度に多くの施術を詰め込むと、どの施術がどう効いているか評価しづらくなり、次回以降の調整が難しくなる
  • どちらも過剰に行うと不自然な仕上がりになりやすい。特にヒアルロン酸の入れすぎは、頬やあごの輪郭が不自然に丸くなる原因になり得る
  • ヒアルロン酸注入直後の腫れが引かないうちに糸を挿入すると、腫れの評価が難しくなり、引き上げ量の判断がずれる可能性がある
  • 併用箇所が多いほど、術後に守るべき生活上の注意事項(マッサージ禁止・激しい運動の制限など)が重なり、日常生活への配慮点が増える

いずれのリスクも、施術の順番・量・間隔を適切に設計することである程度コントロールできます。

向いている人・向かない人

併用が向いていると考えられる人

  • フェイスラインの下垂とこめかみ・頬のこけの両方が気になる方
  • 段階的に施術を重ねてでも、より自然な仕上がりを目指したい方
  • 一つの施術だけでは満足度が上がらなかった経験がある方

併用が必ずしも必要ではない人

  • 下垂もボリューム減少も軽度で、糸リフトかヒアルロン酸のどちらか一方で十分に対応できる方
  • 短期間で最小限の施術にとどめたい方
  • ダウンタイムをできるだけ短く抑えたい方(併用すると腫れ・内出血の期間がまとまって長くなりやすいため)
  • 初めて美容医療を受ける方で、まずは一つの施術で自分に合うかどうかを確認したい方

無理に両方を勧めることはなく、診察の結果、一方だけで十分と判断される場合もあります。

カウンセリングで確認しておきたいこと

併用を検討する際は、カウンセリングの段階で次のような点を確認しておくと、施術後のイメージのずれを防ぎやすくなります。

  • 自分の悩みが「下垂」と「ボリューム減少」のどちらが主因と診断されたか
  • 併用する場合、どの部位にどちらの施術を行うのか、その理由
  • 施術の順番とその根拠(なぜ先にその施術を行うのか)
  • 同日施術か、間隔を空けるか、その場合の間隔の目安
  • 効果が薄れてくる時期の見通しと、次回メンテナンスの考え方

これらを事前にすり合わせておくことで、「思っていたのと違う」という認識のずれを防ぎやすくなります。当院では、無理に多くの施術を勧めるのではなく、今の状態に対して本当に必要な組み合わせかどうかを一緒に考えることを大切にしています。

併用を検討する際によくある誤解

「併用すれば単独より必ず効果が大きくなる」という考え方は、必ずしも正確ではありません。下垂が軽度な方に無理にヒアルロン酸を大量に加えると、かえって顔が丸く不自然な印象になることがあります。逆にボリューム減少が主因の方に糸リフトだけで対応しようとすると、引き上げる土台がないため、不自然な突っ張りが出やすくなります。併用の目的は「効果を足し算する」ことではなく、「その方の状態に合った役割分担をする」ことにあります。

よくある質問

Q1. 糸リフトとヒアルロン酸、どちらを先にやるべきですか?

ボリューム減少が主因なら先にヒアルロン酸で土台を整え、下垂が主因なら先に糸リフトで引き上げる、というのが基本の設計です。診察でどちらが主因かを見極めることが前提になります。

Q2. 同じ日に両方受けることはできますか?

選択肢としてはありますが、腫れ・内出血が重なりやすくなります。ダウンタイムを分散させ、仕上がりを段階的に確認するために、間隔を空けて行う設計もよく選ばれます。

Q3. 併用すると費用は単純に合計されますか?

一般的には、それぞれの施術費用が加算される形になりますが、必要な範囲・量にしぼることで過剰な施術を避けられる場合があります。具体的な金額はカウンセリングで確認してください。

Q4. ヒアルロン酸を先に入れたら糸リフトがやりにくくなりますか?

注入した部位・量によっては影響することがありますが、多くの場合は問題なく施術できます。事前にどこにどれだけ入れているかを担当医に伝えることが重要です。

Q5. 併用すると持ちは良くなりますか?

それぞれの持続期間は独立しており、併用したからといって一方の持続が延びるわけではありません。ただし、土台のボリュームが整っていることで、糸リフトの引き上げ効果が長く自然に見えやすくなるという考え方はあります。

監修:能登谷 翔 医師(たるみリフト専門医/美容外科歴10年・糸リフト症例2000件以上/日本形成外科学会・美容外科学会 正会員/gift clinic 銀座 院長)